規律とは、一部のトレーダーには生まれつき備わっていて、自分にはない性格の特性ではありません。判断を取り除いたあとに残るものです。そして判断を取り除くのは設計の仕事であって、人格のテストではありません。
「とにかく計画を守りなさい」で終わるアドバイスはどれも、ゴールの様子を説明しておきながら、それを道案内と呼んでいるだけです。
意志の力は、この仕事に向かない道具です
意志の力は、1日のうちにすり減っていきます。しかも、トレードが生み出す条件、つまり不確実さ、リスクにさらされたお金、すばやく返ってくる結果のもとで、いちばん速くすり減ります。2連敗したあとの午後2時に踏みとどまるよう意志の力に頼むのは、それがいちばん使えない瞬間に働けと言っているようなものです。
ですから、規律あるトレーダーとは、人より多く我慢できる人ではありません。我慢しなければならないことが少なくなるように、物事を整えている人です。問うべきは「どうすれば自分にルールを守らせられるか」ではありません。「どうすればルールを破るのに手間がかかるようにできるか」です。
自分のルールを破った10回
プラットフォームで自分を締め出せるようになる前、私のルールはただの約束でした。痛い損失を出したら画面を閉じて、その日はやめる、というものです。
私はそれを10回ほど破りました。毎回同じパターンでした。損失が出て、約束は形の上ではまだそこにあるのに、セッションが終わる前に取り返せるという考えのほうが、約束よりも大きな声で響いていました。取り返そうとして失ったお金は、毎回例外なく、最初の損失より大きくなりました。
本物の1日の損失上限、つまりプラットフォームを24時間ロックするタイプのものを設定した最初の週は、みじめでした。早い時間に上限に達し、あと1回トレードしたくてうずうずする手を抱えたまま座っているのに、システムはそれをまったく許してくれません。それこそが肝心な点です。ルールが機能し始めたのは、破ることが選択肢でなくなってからでした。
強制的な休止が防いでくれたのは、小さな損失ではありません。壊滅的な日です。ふつうの悪い朝が、埋めるのに何か月もかかる穴に変わってしまうような日です。
機械的なルールと、願望にすぎないルール
トレードのルールの多くが失敗するのは、そもそもルールではなかったからです。数字がついただけの「意図」だったのです。
| 願望にすぎない(守れない) | 機械的(守れる) |
|---|---|
| 「オーバートレードをしない」 | 「1日最大4トレード。5回目は発注しない」 |
| 「リスクを適切に管理する」 | 「1トレードあたり1%。サイズはセッション前に計算し、途中で計算し直さない」 |
| 「リベンジトレードをしない」 | 「2回負けたら、翌日までプラットフォームを閉じる」 |
| 「良いセットアップを辛抱強く待つ」 | 「下のチェックリストがすべて埋まるまでエントリーしない」 |
| 「感情をコントロールする」 | 「勝ちトレードを早く決済したくなったら、まず10分間何もしない」 |
どんなルールでも、試金石は、見知らぬ人がそれを確認できるかどうかです。あなたの日誌を読んだ人が、ルールを守ったかどうかを判断できないなら、それはルールではありません。そして、調子の悪い午後を乗り切ることはできません。
チェックリストは、最も効果の大きい習慣です
1ページ、5〜7行。エントリーの前に毎回、目の前に置きます。項目を忘れるからではなく、チェックを入れているうちに衝動が過ぎ去るからです。
実際に使える例:
- セットアップが、書き出した定義のどれか1つに当てはまり、それがどれかを言える。
- クリックする前に、エントリー理由を1文で書いた。
- 損切り(ストップ)と目標の両方をチャートに引いてある。
- サイズはリスクから計算したもので、感覚で選んだものではない。
- 今日5回目のトレードではない。
- 損失から15分以内のエントリーではない。
- ふつうの値動きのノイズの中でも、このポジションを落ち着いて持っていられる。
最後の1行は、ほかの6行を合わせたよりも多くの悪いトレードを止めてくれます。正直な答えが「いいえ」なら、サイズが間違っています。どれだけ自分を見つめ直すよりも、速い診断です。
ルーティンはセッションの中ではなく、その前後に組む
セッション中の規律は、ほとんどが始まる前に決まっています。
| いつ | 所要時間 | やること |
|---|---|---|
| セッション前 | 10分 | サイズを計算。1日の損失上限を書き出す。監視銘柄を固定。チェックリストを見える場所に |
| セッション中 | 継続 | 新しい判断はしない。すでに決めたことを実行するだけ |
| 最後のトレードのあと | 5分 | 気分がまだ正確なうちに日誌を記入 |
| 毎週 | 20分 | ルール違反の数を数える。利益ではなく |
| 毎月 | 1時間 | 記録を並べ替える。曜日、時間帯、セットアップごとのパターンを探す |
この表の要は、真ん中の行です。セッション前には決めていなかった判断をセッション中にしている自分に気づいたら、その瞬間に規律が消費されています。押し切る瞬間ではなく、気づくべき瞬間です。
ルールを破ってしまったときにすること
ルールを守れとは、誰もが言います。ところが、破ったあとどうすればいいかを教えてくれる人はほとんどいません。おかしな話です。ルールを破るのはふつうのことで、そのときの対処が、システムが生き残るかどうかを決めるのですから。
やることは3つ。この順番です。
- トレードとしてではなく、違反として記録する。勝っていても、日誌の「計画どおり(はい/いいえ)」には「いいえ」と記入します。勝った場合こそ、です。利益の出たルール違反こそ、また同じことをするように自分を教え込んでしまうからです。
- 罰のルールを追加しない。違反に対して、さらに3つのルールを加えて対応する人がいます。そうするとシステムが重くなり、次の違反が起きやすくなります。ルールの数は、頭の中に収まるくらい少なく保ちましょう。
- そのルールが間違っていなかったか考える。何度も破ってしまうルールは、厳しすぎるのではなく、設計が悪いだけのこともあります。1回破られたルールは規律の問題です。10回中8回破られるルールは悪いルールで、正直な対応は、失敗し続けることではなく、作り直すことです。
この3つ目の点は、ほとんどの記事が書かないことです。許可のように聞こえるからです。でも、許可ではありません。メンテナンスです。守れないルールは、自分のシステムを無視するよう自分を訓練する以外、何の役にも立ちません。
規律は利益とは別に測る
ここが、ほかのすべてを機能させる部分です。トレードが難しい理由で説明したとおり、破ったルールが利益を生むこともあれば、守ったルールで負けることもあるので、利益は規律の物差しとしては不向きです。
そこで、お金とはまったく関係のない数字を1つ持っておきます。自分の計画どおりにトレードできた割合です。これはトレード日誌の「計画どおり(はい/いいえ)」の列から、そのまま出てきます。
| 計画どおりだった割合 | 意味すること |
|---|---|
| 50%未満 | まだ戦略はなく、意図があるだけ。ほかは何も評価できない |
| 50%〜80% | 1年目としてはふつう。どのルールが破られているのかを突き止める |
| 90%超 | ようやく戦略そのものの結果で評価できる。それこそが目的 |
この数字は、残高よりずっと早く、数週間で改善します。だから、初期のうちに手に入る唯一の励みになる測定値です。そして、完全に自分でコントロールできる唯一の数字でもあります。
身につけたい習慣を、この順番で
これを全部一度に始めると、結局どれも身につきません。1つずつ、2週間おきに。
- クリックする前にエントリー理由を書く。いちばん手軽で、効果はいちばん大きい。しかも、一部のトレードがそもそも行われなくなります。
- サイズはリスクから計算する。セッションから、いちばんダメージの大きい判断を取り除きます。
- 日誌はその日のうちに書く。1週間後に書いた記録は、フィクションです。
- 1日の損失上限を厳守する。悪い日を、悪い月にせず、悪い日のままで終わらせてくれるルールです。
- 毎週振り返り、「いいえ」の行を数える。ここまでのすべてを、事務作業ではなく情報に変えてくれます。
よくある質問
自分のトレードルールを破るのをやめるには?
ルールを機械的にし、数を少なくし、チェックリストを必ず目に入る場所に置き、減らしたい行動には手間を加えることです。それでも同じルールが何度も破られるなら、ルールを作り直してください。ルールを何度も守れないことは、そのルールについての情報です。
規律が身につくまで、どのくらいかかりますか?
計画どおりの割合は、たいてい数週間で動きます。性格ではなく、仕組みの整え方で決まるからです。時間がかかるのは、連敗中もそれを信頼し続けることです。そしてそれは、規律というより、ふつうの連敗がどんなものかを知っているかどうかの問題です。
規律は戦略より大事ですか?
比べることはできません。規律がなければ、戦略が機能するかどうかを確かめられないからです。検証されていない戦略と壊れた戦略は、外からはまったく同じに見えます。規律があってはじめて戦略を測定できるので、規律が先に来なければなりません。
負けた日にだけルールを破ってしまう場合は?
それはいちばんよくあるパターンで、規律全般の失敗ではありません。特定の1つのきっかけです。システム全体ではなく、そのきっかけに対処しましょう。まずは損失のあとに起きることからです。
要点
ルールは少なくし、どれも見知らぬ人が確認できる形にする。すべてをセッション前に決め、エントリーの前には毎回チェックリストに印をつけ、違反は利益が出たものも含めて正直に記録する。
そのうえで、計画どおりにトレードできた割合を測り、それを自分のスコアにしてください。お金は別の話で、ずっと時間のかかる話です。